ほっとタウン - 2012年08月号 -  公益財団法人 荒川区芸術文化振興財団

ほっとタウンは荒川区芸術文化振興財団が毎月発行している、荒川区の地域情報誌です。区内の様々な情報や、区民のみなさまが参加されている各団体の活動、区内のイベントなどを掲載しています。


>> P.2

広告のお申し込みは・荒川区芸術文化振興財団☎3802-7111 自分が生まれ育った土地にはどんな歴史があるのか、どんな名所旧跡があるのか。また、新しく住んだ土地にはどんな由来があるのか、近所にはどんな場所があるのか。聞かれて答えようとすると、実は意外に知らないことに気づかされます。南千住に生まれ育った杉山六郎さんは、地元への愛情を原動力に街を歩き、郷土の歴史を探求しています。 杉山さんのご先祖は江戸の鳶︵とび︶職で、代々、火消し﹁ぬ﹂組の頭を務めてこられたそうです。江戸時代から数えて16代目、7人兄弟の6番目に生まれた杉山さんは鳶は継がず、昭和36年にコツ通りに大衆食堂を開きます。 ﹁当時は山盛りのご飯が一膳15円。妹の亭主の寿司屋の口利きで、高級米を仕入れ、嫁の実家の八百屋で野菜を分けてもらい、うまい安いで、山谷の労働者が朝から行列をつくるほど繁盛しました﹂ 食堂を営みながら、街の移り変わりを眺めてきた杉山さん。もともと歴史が好きだったこともあり、30年ほど前から独自に地元の歴史の研究をはじめました。 ﹁千住っていうと、なんだか悪いイメージを持たれるんです。出身を隠したりする人もいて。土地のことを知らないで表面だけ見て悪いって言うのはおかしいだろうと。そんな不満もありました。自分で歴史を調べて、どんどんはまっていきました。江戸時代の南千住は日光街道に面した宿場として栄えた街。明治時代になって日本初の毛織物工場が、大正時代には火力発電所ができ、隅田川の恵まれた水運と山谷の豊富な労働力によって、日本の近代化に大きく貢献しました。小塚原︵こづかっぱら︶に罪人のおしおき場︵刑場︶があったのも、刑法に欠かせないものだったわけで、人間が生きて行く上で重要な役割を果たした土地なんです﹂ 街を歩き、地図や資料を読み、コツコツと研究を続ける杉山さん。調べたことをミニコミ紙のコラムに連載し、それをまとめた﹁コツ通りの一口話﹂という本も出版しています。地元の子どもたちに自分の街を知ってほしいと、第二瑞光小、第三瑞光小、汐入小など、区内の小学校に声をかけ、PTAの協力で、子どもたちのための街歩きも実施しました。いつも通っている千住大橋の下を見たり、歴史のお話をしたり、子どもたちだけでなくお母さんたちにも大好評でした。 豊富な知識と経験をもとに、杉山さんは﹁荒川区観光ボランティアガイド﹂の立ち上げに協力し、通常のガイド業務のほか、ガイド育成も務められています。荒川区観光ボランティアガイドとは観光振興課に予め申し込んで、1回に5∼20人程度、2時間くらいで、希望にそって区内の観光スポットや史跡・文化財などをガイドするものです。現在、観光ボランティアガイドには全65名が登録しており、ガイドの練習をしたり、実際に街歩きを行ったりしています。 ﹁ガイドは先方の希望にそって、楽しんでもらえるようなコース作りを考えます。参加者にお年寄りが多いときは時間に余裕をみたり、専門的な史跡を見たいというときは予習したり。いろいろ準備に時間はかかりますが、ガイドした人が喜んでくれるのが何より嬉しいです。最近では、荒川区にある工場や工房などに協力してもらって新しいコースを作りました。史跡を見て、工房の見学やもの作りを体験し、締めくくりに地元の洋菓子店でお茶をいただくときもあります。地元の産業体験やグルメの要素も入れれば、コースはより充実します。観光は地域の活性化につながる大事な事業だと思います﹂ 過去の探訪から将来の地域おこしまで、広く視野に入れて活動する杉山さん。﹃あらかわ今昔ものがたり﹄︵荒川区教育委員会と荒川ふるさと文化館による子ども向け歴史読本︶などの資料をもとに﹁南千住検定﹂を作ったらどうだろう。区内5地区の検定を設けて話題作りをしようなど、地元の学校の校長先生や関係者の方々との今後に向けたまちおこし企画にも加わっているとのことです。 そして今、杉山さんが気にかけているのは、昨年の地震で壊れてしまった﹁延命寺の首切り地蔵さん﹂の再建です。街は移り変われども、変わらぬおだやかな表情で街を見守るお地蔵さんを地域の皆さんの力を合わせて修復したいと強く願っています。ACC         2012年8月号NO.284I02杉山六郎さんすぎやまろくろう街を愛し、街に学び、街を育てる。  今と昔、そして未来を描く案内役。【プロフィール】 昭和10年、荒川区南千住5丁目生まれ。南千住駅前に「仙成食堂」を経営する傍ら、郷土史家として活動。青少年から大人まで地元の魅力を伝える街歩きを行い、観光ボランティアガイドの企画・育成に関わる。南千住駅前コツ通り商店会会長、荒川区商店会連合会副会長、足立区千住宿歴史文化ガイドなども務める。江戸から近代に向けて南千住が果たした役割とは知識と経験を活かして観光からまちおこしへ地震で壊れた延命地蔵尊荒川区観光ボランティアガイドとして史跡・文化財等の案内をする杉山さん(右から1人目)情報満載のオフィシャルサイトへアクセス!荒川区芸術文化振興財団荒川区青少年育成南千住地区委員会副会長荒川区観光ボランティアガイド昨年3月11日の地震により、延命地蔵尊(首切り地蔵さん:高さ4メートル)の左手が落下し、また、土台も傾いてしまいました。危険のないよう、現在は解体されていますが、修復には多額の費用がかかります。延命寺ではお地蔵さまの修復募金を募っています。■お問い合わせは下記まで 延命寺:荒川区南千住2-34-5     ☎03-3807-0897お地蔵さまの修復募金のご案内


<< | < | > | >>