ほっとタウン - 2013年02月号 -  公益財団法人 荒川区芸術文化振興財団

ほっとタウンは荒川区芸術文化振興財団が毎月発行している、荒川区の地域情報誌です。区内の様々な情報や、区民のみなさまが参加されている各団体の活動、区内のイベントなどを掲載しています。


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広告のお申し込みは・荒川区芸術文化振興財団☎3802-71112012年12月に開催された「神山卓也&神山英徳∼兄弟初ライブ∼」より。ステージと客席が近くアットホームな雰囲気。2004年10月に行われた『第4回福豊会おさらい会』にて。小さな身体に抱えた太棹の三味線が大きく見えます。 豪快さと繊細さを合わせ持つ音が心に迫ってきます。青森県津軽地方で旅芸人たちが始めた門付け芸に始まり、戦後の民謡ブームを経て全国に広まった津軽三味線。他の三味線と比べて棹が太く重量感のある太棹︵ふとざお︶を使い、撥を叩きつけるようにしながら演奏します。迫力のある音と、弾き手が持つ感性や技巧によって同じ曲でも展開が変わる即興性もその魅力。荒川区に生まれ育った2人の青年、神山卓也さん、英徳さん兄弟は、津軽三味線に魅せられて小学生の頃から練習を重ね、プロへの道を歩んでいます。 津軽三味線を最初に始めたのは弟の英徳さん。もともと祖父や父親が津軽民謡好きで、家の中でよくCDを流していたそうですが、耳で聞いていた時点ではそれほど興味は湧かなかったと言います。ところが、英徳さんが8歳のとき、偶然テレビで見た、国内外でも活躍する茨城県出身の奏者、上妻宏光︵あがつま・ひろみつ︶さんに強く惹かれました。﹁単純に、上妻さんの演奏を見て、カッコいいなあと思ったんです。それで両親に津軽三味線を習いたい、と言ったら、家の近くにある﹃三味線かとう﹄に相談してくれて、かとうさんから福士豊秋︵ふくし・とよあき︶先生をご紹介いただきました﹂︵英徳さん︶ 家のすぐ近くに、三味線作りを専門とし、演奏家の育成にも熱心でライブハウスまでも備えた﹃三味線かとう﹄があったこと。また、本場青森出身で、青森市で開催される﹁津軽三味線日本一決定戦﹂初代チャンピオンである福士豊秋先生が区内に在住され、直にお稽古をつけていただいたこと。今思えば、たいへん恵まれた環境で始めることができたと言います。 福士先生が会主をされている福豊会に英徳さんが入会した1年後。次第に弾けるようになっていく弟の姿を見ていた兄の卓也さんは、兄弟でやってみたらという両親の後押しもあり、追って入会することになりました。 津軽三味線の練習は、週1回、先生のご自宅に伺ってマンツーマンで教えていただき、それをテープに録音して、自宅で毎日1時間ほど練習するのが日課だそうです。﹁基本的に練習に楽譜は使いません。先生の演奏を見て聞いて覚えて、家ではテープを聞いて、自分なりに練習します。構え方から、初歩的な指の動き、糸の叩き方などの基礎練習をして、最初の合奏曲が弾けるようになるまでに1年弱かかりました。先生が楽しく教えてくださったこともあって、小学生でも飽きずに続けられたんだと思います﹂︵卓也さん︶ こうして兄弟揃って続けてきた津軽三味線。練習の成果を試すべく、さまざまな全国大会にも出場して優勝、準優勝などの優れた成績を残しています。特に、平成20年5月に青森市で開催された﹃津軽三味線日本一決定戦﹄では、卓也さんがB級︵始めて5年未満︶の部、英徳さんがジュニアの部でそれぞれ優勝という快挙を成し遂げ、西川区長からの激励も受けています。ACC         2013年2月号NO.290I02神山英徳さんかみやまえいとく神山卓也さんかみやまたくや若い情熱を津軽三味線に込めて   情景を描くような音を目指す【プロフィール】 右:神山卓也さん、1991年8月25日生まれ。左:神山英徳さん、1993年12月17日生まれ。共に荒川区に生まれ育ち、現在は大学在学中。弟・英徳さんは8歳、兄・卓也さんは11歳から福士豊秋氏に師事し、津軽三味線を始める。日々の練習を積み重ね、全国大会に出場して腕を磨き、プロ奏者を目指している。小さな手に大きな太棹を持ち恵まれた環境のもとで腕を磨く初の兄弟ライブを成功させさらに大きな目標に向かう2008年「長寿慶祝の会」情報満載のオフィシャルサイトへアクセス!荒川区芸術文化振興財団津軽三味線奏者 そして、昨年12月1日、﹃三味線かとう﹄のライブハウスにてファーストライブが行われ、満員御礼となりました。2人の演奏を軸に、福豊会の若手奏者たちにも参加してもらって作り上げた90分のステージ。以前から仕事として催し物などで演奏はしてきたけれど、自分たちの三味線を聞くためにお金を払って集まっていただくのは初めて。失敗できないという大きなプレッシャーがあったそうです。﹁良い緊張感の中で演奏することができました。ライブができたのは、これまで指導していただいた福士先生、応援してくれた三味線かとうさん、家族、友人や仲間たちなどたくさんの人たちのおかげです。先生からは、これを第一歩として、これからも頑張っていきなさいと激励していただきました﹂︵英徳さん︶ ﹁今後は歌い手に伴奏をつける﹃唄付け﹄ももっと練習して、独奏だけでなく唄付けの実力もつけ、先生が優勝した﹃津軽三味線日本一決定戦﹄にも出場して良い成績を残したいです。まだまだ道のりは長いですが、プロとなって弾き続け、先生のように、情景の浮かんでくるような音を目指していきたいと思います﹂︵卓也さん︶ 伝統芸能である津軽三味線の魅力をさらに広げていこうとするエネルギーにあふれた2人に、惜しみなく大きな声援を送りたい。実は、兄弟の弟で8歳になる智彦さんも昨年8月から福豊会に入門したとのこと。ゆくゆくは、3兄弟による津軽三味線トリオの演奏が聞ける日が来るのもそう遠い夢ではなさそうです。


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