ほっとタウン - 2013年06月号 -  公益財団法人 荒川区芸術文化振興財団

ほっとタウンは荒川区芸術文化振興財団が毎月発行している、荒川区の地域情報誌です。区内の様々な情報や、区民のみなさまが参加されている各団体の活動、区内のイベントなどを掲載しています。


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広告のお申し込みは・荒川区芸術文化振興財団☎3802-7111ACC         2013年6月号NO.294I02柳田朋哉さんやなぎだともや全日本学生囲碁十傑戦 優勝全日本学生囲碁王座戦 優勝学生棋士情報満載のオフィシャルサイトへアクセス!ACC公益 昨年行なわれた﹁全日本学生囲碁十傑戦﹂ならびに﹁全日本学生囲碁王座戦﹂で優勝、学生個人タイトル二冠に輝いた柳田朋哉さん。 柳田さんが囲碁をはじめるきっかけとなったのは、荒川区囲碁連盟会長・田代貢氏主宰の﹁ちびっこ囲碁教室﹂、通称〝ヒカルの碁の教室〟でした。折しも、テレビ東京で放映されていたアニメ﹁ヒカルの碁﹂が絶大な人気を誇り、少年たちの間でちょっとした囲碁ブームが起こっていました。当時小学校4年生だった柳田少年は、友だちに誘われるまま、その囲碁教室に入会。それまでは、家族に囲碁を打つ人もなく、実はアニメの﹁ヒカルの碁﹂も見ていなければ、囲碁という言葉すら知りませんでした。ところが︱ ﹁自分でも思いがけなく上達が早かったんです。一度負けた相手にも次の対戦では勝てたり。楽しくて楽しくて、理屈ではなくただハマっちゃいました﹂ と、柳田さんは語ります。 それまでは、友達と外で遊ぶことも多かった柳田さんでしたが、囲碁教室で友達が増えていく楽しさも手伝って、どんどん囲碁にのめり込んでいったそうです。 そんな柳田さんの類稀な才能に目をつけた田代氏に誘われ、柳田さんは、町屋文化センターで行なわれていた棋成会に週2回通いながら、大人に混じって囲碁を打つようになりました。上達は実に早く、小学校5年生で初段、6年生の初めには六段にまで到達。すでにその頃にはプロを目指すことを決め、日本棋院の院生となりました。 中学は囲碁部のある学校に行きましたが、学校の勉強と囲碁との両立はとても難しかったこともあり、高校は囲碁を優先して選びました。しかし、自ら選んだ道は大変厳しく、日本棋院院生在籍中にプロ試験に合格することは叶いませんでした。そこで柳田さんは、囲碁の強豪、立命館大学への進学を決意。大学在学中に、あくまでプロを目指すかどうかを自ら見極めようと考えたのでした。 大学入学後しばらくは、全国大会には出られるものの1回戦負けを喫するなど、﹁自分でも信じられないくらい﹂の不振が続きました。ところが、全日本学生囲碁十傑戦からは一転、冒頭に記したような結果を残す快進撃。柳田さん曰く﹁理由は分からないが、負ける気がなぜかおこらない精神状態になった﹂といいます。 ﹁普段どおりに﹂というのが対局時の一番いいコンディションなのだそうで、まずはそれだけを心掛けて対局に臨んでいるそうです。 ﹁実は自分は朝に弱い体質なんです。一方対局は朝9時からということが多いので、その時間にちゃんと頭が目覚めているように、前日の就寝時間の調整は欠かせません﹂ 神経質な棋士が多い中、柳田さんの場合、その事以外には特に験を担いだりすることもないそうです。ただ、リラックスするために音楽を聴くことは多く、特にJ-ポップの女性アーティストの曲を好んでよく聴くそうです。 ﹁いつもと違う音楽を聞いてしまうと、対局の間じゅうその音楽がずっと頭の中で響いてしまう。以前そういうことがあって、集中できなくなって困りました。だから選曲には特に気を遣いますね﹂ という柳田さんの話を聞けば、囲碁というのが、いかに真剣勝負の世界であるかがよくわかります。また、苦戦しているときは、﹁頭が熱を持ってくる﹂事もあるそうで、椅子などに寄りかかってクールダウンすることもしばしば。囲碁はまさに頭脳戦なのだと、改めて思わずにはいられません。 柳田さんの棋譜は、〝手厚い棋譜〟と評されていて、一回失敗しても負けにくい、崩れにくい囲碁なのだそうです。またその一方で、打った瞬間に、〝失敗した!〟と感じることもよくあるそうで、 ﹁普通は、指し返しの時に気づくんですが、自分の場合、打った瞬間に気づいてしまう。つまりそれは、きちんと考えて打ってないということで、よく怒られるんです﹂ そう飄々と語る柳田さんの表情には、なんとも大物らしい雰囲気が漂っています。最後に、囲碁の魅力について尋ねてみると、 ﹁囲碁って、基本的に打ち方が決まっていないので、いろんな打ち方があるんですね。自分が強くなると、以前は見えなかった手が見えてくるんです。それを発見する事がとても楽しい﹂ という答が返ってきました。その言葉の中には、囲碁というものの無限の奥深さと、柳田さんの棋士としての大きな可能性とが内包されているように感じられました。 今後は、全日本学生囲碁十傑戦と全日本学生囲碁王座戦の連覇。そして、昨年獲り逃した全日本学生本因坊決定戦のタイトルを獲得することで、学生個人タイトル三冠を目指す柳田さん。プロ棋士への熱い思いはさらに燃え続けます。出発はちびっこ囲碁教室   大器の風格を備えた学生棋士■プロフィール平成4年、荒川区生まれ。第二峡田小学校卒業。小学4年生から囲碁を始め、小学5年生で初段、小学6年生で六段に。同時に日本棋院の院生となりプロ棋士を目指す。現在は立命館大学(3年)に在学し、全日本学生囲碁十傑戦、全日本学生囲碁王座戦の学生個人タイトルを獲得すると共に、世界学生王座戦などで活躍。楽しいからメキメキ上達理屈じゃなくハマった囲碁全日本学生囲碁十傑戦、全日本学生囲碁王座戦で優勝した柳田さん(ともに左)強くなると見えてくる手その発見がとても楽しい


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