ほっとタウン - 2014年05月号 -  公益財団法人 荒川区芸術文化振興財団

ほっとタウンは荒川区芸術文化振興財団が毎月発行している、荒川区の地域情報誌です。区内の様々な情報や、区民のみなさまが参加されている各団体の活動、区内のイベントなどを掲載しています。


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ACC         2014年5月号NO.305I02情報満載のオフィシャルサイトへアクセス!ACC公益臼井二美男さんうすいふみお公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター義肢装具研究室長・義肢装具制作担当課長 義肢装具士切断障がい者たちの自己実現を  義足製作を通して支え続ける■プロフィール1955年群馬県前橋市生まれ。58歳。大学中退後、フリーター生活を経て28歳で現職に就く。以後、義肢装具士として多くの義足製作に取り組み、1989年より通常の義足に加え、スポーツ義足の製作も開始。1991年に切断障がい者のスポーツクラブ「ヘルス・エンジェルス」を創設し、切断障がい者に義足を装着してのスポーツを指導。2000年シドニー大会よりパラリンピック日本選手団のメカニックを担当。■切断障がい者のスポーツクラブヘルス・エンジェルス HTTP://WWW.HEALTHANGELS.JP/■公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター HTTP://WWW.KOUSAIKAI.OR.JP/SUPPORT/と言うんです。義足で交互に走ることの難しさを知ったと同時に、なぜ若い子が諦めなければならないんだろう。なんとかしてあげたいと思いました﹂ 臼井さんは研究費を申請し、米国製の膝や部品を取り寄せてスポーツ義足を試作。20代の女性に試してもらうと、ポンポンポンと5歩くらい走ることができ、彼女の目に感激の涙が溢れたそうです。これはやる価値があると感じ、立ち上げたのが、切断障がい者のための陸上クラブ﹁ヘルス・エンジェルス﹂です。 病気や事故など切断原因はさまざまですが、切断後の生活や社会復帰を目指すことが最初の共通した目標。さらに、患者さんの描く夢や将来像に少しでも助けになればという思いで義足を作っていると臼井さんは言います。絵を描くことが好きな患者さんには、義足をキャンバスにすることを提案したり、スポーツを提案するのもその中のひとつです。 ﹁障がい者へのスポーツの効能は大きく、走れるようになると、歩くことが楽な動作になり、身体能力の向上に加え、精神力や自信も同時についてきます。特に子どもの場合は、体も丈夫になり、自立心や協調性が培われ、いいことずくめです﹂ 義足を通して、患者さんひとりひとりの人生を見守り続ける臼井 日比谷線南千住駅の隣りに建つ﹁公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター﹂。今回の荒川の人は、ここに勤める臼井二美男さん。臼井さんは30年にわたり3000人以上の切断障がい者の義足を作るとともに、昨年のオリンピック招致のプレゼンに貢献した佐藤真海さんなど多くのアスリートを支えるスポーツ義足の第一人者です。義肢装具士の仕事、ご自身が代表を務める切断障がい者スポーツクラブ﹁ヘルス・エンジェルス﹂についてお話を伺いました。 臼井さんが﹁義肢装具サポートセンター﹂の前身﹁東京身体障害者福祉センター﹂に入ったのは28歳のとき。手に職をつけたいと一念発起した臼井さんの脳裏に浮かんだのは、小学校6年生のときの担任の先生が悪性腫瘍で大腿切断をし、義足になってしまった記憶だったそうです。 ﹁職業訓練校の﹁義肢科﹂へ通おうと決め、どんな仕事なのか見学に行ったら、﹃見習いで来ないか﹄と誘われ、学校に通うことなく、翌月から見習いで入り、半年後には正社員に。それが今の職場です。その5年後に制定された義肢装具士の国家資格も、経過措置で5年以上の実務経験者の受験が認められ、最短で資格が取れました﹂ その頃、海外の専門書で米国や欧州の義足アスリートの存在を知った臼井さんでしたが、周りに義足で走れる人は誰一人いなかったそうです。   ﹁若い患者さんに聞くと、﹃走ろうと思っても義足が動きについてこないし、壊れたら次の日会社に行けなくなる。そんなこと怖くてできない﹄さんのやりがいは、関わった患者さんが明るく、いきいきと、たくましく変わっていくのを見られること。 ﹁パラリンピアンとなり、メダルをとって喜んでいるシーンばかりでなく、母親に甘えていた子が成長し、自立した社会人となっていく過程を見られるというのは本当に嬉しいことです﹂ 月1回の﹁ヘルス・エンジェルス﹂の活動を25年間1度も休まず続けてきた臼井さん。佐藤真海さんをはじめ、多くの選手を輩出し、今なお次代を担う選手の指導と育成を行っています。現在約80名のメンバーは、小学生から70歳くらいまでの切断障がい者とその家族、さらに理学療法士や学生などのサポーターも増えてきているのはうれしいことです。 一方で、スポーツ用義足は高額なため個人での購入が難しいという現実もあります。生活用義足は自立支援法で補助が受けられるのに対し、スポーツ用義足は自己負担。﹁義肢装具サポートセンター﹂の患者さんは、スポーツ用義足を履いて試すこともできますが、一般的には履いてみるチャンスもなければ、目にすることさえできないのだと臼井さんは言います。 ﹁2020年の東京パラリンピックに向け、興味を持っている子どもにスポーツ用義足を貸与したり、各県にサテライト的な障がい者スポーツセンターを設けるなど、障がい者がスポーツにチャレンジできる体制をもっと整えて欲しいですね﹂ 7年間で障がい者スポーツへの理解が進み、東京パラリンピックで多くのアスリートの笑顔が見られることを心より願っています。臼井さんの仕事の様子イキイキとした笑顔を見せるヘルス・エンジェルスのみなさん義肢装具士という天職に出会い、取り組みはじめたスポーツ義足東京パラリンピックに向けて、より環境の整備や施設の充実を患者さんひとりひとりの未来に義足が少しでも助けになれば


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